ならべて嬉し十のさかづき

080209062

―世間虚仮― 格差は格差のままに、か

ETCさえ搭載していればなべて休日の高速道路-旧道路公団関係など-料金を一律1000円にするという、不人気をかこつ麻生内閣景気対策の目玉というべき高速道路値下げが一斉に始まったが、時事通信社時事ドットコムによれば、その出足、前年比の1〜5割増の賑わいだが、GW並みというには及ばず、道路各社が事前に予測していたほどのものではなかったらしい。

そりゃそうだろう、今日から始まったのは普通車限定だというし、昨秋から続くこの深刻な不況感がこの程度の思いつき的な景気刺激策で一気に払拭できるとは到底思えぬが、道路各社など関係機関ではGW並のラッシュをも想定していたというのだから、その大甘の認識ぶりには畏れ入る。

マンションなど住宅取得者への所得税大幅減税をしたし、なりふり構わぬ大判振舞いの麻生内閣、次なる景気対策は富裕高齢者層を狙い撃ちとばかり、贈与税の大幅減税を本格検討という。子や孫世代の住宅や車の購入資金に対し、贈与税をゼロ乃至大幅減税をというのだ。

かたや、規制緩和の派遣法で、雪崩的に大量の貧困化現象を生ぜしめた果てに襲いかかった大不況のなか、元凶たる派遣法改正には一向手が付けられず、急場しのぎ的としかいいえぬ失業手当の拡充や緩和策の雇用保険法改正でお茶を濁しているにすぎず、バブル崩壊以後、大量発生させてしまった貧困層、それ自体を底上げしようという抜本的な対策はまったく省みられていない。


<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>

「灰汁桶の巻」−04

  新畳敷ならしたる月かげに  

   ならべて嬉し十のさかづき  去来

次男曰く、「ならべて」は「敷ならしたる」の、「嬉し」は「新畳」のうつり、与奪して一首の和歌の姿に作っている。連句というより、むしろ連歌の体である。芸といえば、「並べて嬉し四つ-四人-の盃」と作りたくなる筈のところを、抑えて、
作意と見せる数を取出したところか。

十という数は十全を現すが、めぐって再び一-はじまり-に続くところが、目付のみそだ。「十」は、次座-芭蕉-に対する、去来らしい持成の工夫だろう。「嬉し」さの度のみに心を向けているわけではない。句意は、明日の祝事-茶事とはかぎらぬ-をひかえて、饗膳の引盃を新畳の部屋に並べてみている、と読んでおけばよい。

「前句に新宅のさまありありと見ゆれば、此句には宴のさまを附けたり」-露伴-、「自分のところへたくさん-宴会の-盃が集まってきて、ほくほくしている。‥自分を祝う盃が、おのずから自分をとりまいた」-折口信夫-、と。

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