乗出して肱に余る春の駒

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―四方のたより― 成田屋騒動

一昨日の土曜日-4/4-は、朝から雨模様。地下鉄御堂筋線「動物園前」駅の2番出口を上がり山王の交差点、その東南角にある駄菓子とおでんの一風変わった店「成田屋」。この店の軒先では折々街頭Performanceが繰り広げられるらしいが、このたびは奇友デカルコ・マリィとviolaの大竹徹、percussionの田中康之の二人が組んだ「とりおとるお」が「成田屋騒動」なるEventをするというので、雨中をついて子連れで出かけてみた。

Performanceは衣装替してのデカルコ・マリィ二態で、共演者にDancer石井与志子という組合せ。このDancer、動きはマリィに寄添うばかりで見るべきほどのものとてないけれど、雨に濡れそぼる両腕の、よく鍛え込まれたかと見える筋肉がちょっぴり魅力的ではあった。

踊り始めてまもなく、50過ぎかとみえる通りがかりの中年男性が驚き顔で足を止め見入っていたが、D.マリィが雨降る路上へと踏み出していくと、件のおじさん、演者が濡れては可哀相だとばかり、やおら自分の傘をDにさしかけては、動きに合わせて共に傘も動く。その構図が街頭ならではの点景としてなかなか秀逸なものだった。


<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>

「灰汁桶の巻」−07

   鶯の音にたびら雪降る  

  乗出して肱に余る春の駒  去来

次男曰く、初折裏入である。

「うぐひすの谿-たに-より出づるこゑ無くば春来ることを誰か知らまし –大江千里」-古今集・春-。
以来、「谿より出づる」は初鶯の寄合の詞だが、ウグイスは「ホー、ホケキョ」と二節に鳴く鳥だということが、とりわけ利いているらしい。両々相俟って、「乗出して」の興をうごかしている。初鶯の、身も声も乗出すさまを騎乗の人に執成した、即妙な気転である。

作りには、余勢を駆って、「肱-かひな-に余る春の駒」にも名誉の下敷がある。
「引寄せば唯には寄らで春駒の綱引するぞ名は立つと聞く –平定文」-拾遺集・雑賀-

作者は「平中日記」の主人公として知られた人物。去来は大坪流馬術の上手だったから、句材はまず自らの経験に即した思付だったかも知れぬが、いずれから作るにせよ思案は一途に合う、と。

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