町内の秋も更行明やしき

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―世間虚仮― 定額給付金

大阪市でも定額給付金の事務手続きが始まったようで、本日我が家にも給付案内及申請用紙同封の封書が届けられたが、その書面を見てまず感じさせられたのは、やはり法案成立段階で取り沙汰されていた事務煩瑣の問題だ。

その申請用紙たるや、全国の市町村なべて一律の書式かどうかは知らぬが、まあご大層なものである。受取を金融機関の振込とする場合には、口座名口座番号等を記入しなければならないのは無論のことだが、ご丁寧にもこの欄には個人情報保護のため貼付ける保護シールも添付されている。ところが裏面には本人確認のために運転免許証やパスポートなどのコピーを貼付けろとなっているし、おまけに金融機関口座確認書類として通帳またはキャッシュカードのコピーまで貼付けねばならないのだが、これらの欄には保護シールなぞ用意されていない。これでは頭隠して尻隠さず、まるで意味をなさない噴飯もので思わず笑ってしまったが、たしかこの事務経費に825億円の補正予算が計上されていた筈、そんな巨額を投じる大盤振舞の神経には、こんなくだらぬ無駄も些末なことでしかないのだろう。

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>

「灰汁桶の巻」−15

   あつ風呂ずきの宵々の月  

  町内の秋も更行明やしき  去来

次男曰く、前句を病膏肓に入った人の体と見て、「秋も更行-ふけゆく-」-深くなる-と作っている。

垢掻を「吹く」と遣うようになった俗語の生れは、汗まじりの湯気を吹寄せて垢を掻くからか、それとも蒸されてふうふうのぼせるからかはっきりしないが、いずれにしろここでの付の思付の発端は「吹く」-他動詞-と「更く」-自動詞-の語呂合せに違いない。

但し、同じ入揚げるにしても、片や熱風呂通い、片や空家覗き、というのぼせとさましの対照的目移りが妙である。前句に色模様-湯女-を絡ませて読めば、「更行」秋のわびしさの情がいっそう利くだろう。秋と飽きの掛は和歌の常套だが、俳諧で遣えば秋が空-明き-になった、と去来は笑わせたいらしい、と。

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