波の音たえずしてふる郷遠し
Information – 四方館 DANCE CAFE –「出遊-天河織女篇-」
9月30日、秋晴申分なし、折生迫、角屋
いよいよ出立した、市街を後にして田園に踏み入つて、何となくホツとした気持になる、山が水が、そして友が私を慰めいたはり救ひ助けてくれる。-略-
今日、求めた草鞋は-此辺にはあまり草鞋を売つていない-よかつた、草鞋がしつかりと足についた気分は、私のやうな旅人のみが知る嬉しさである、芭蕉は旅の願ひとしてよい宿とよい草鞋とをあげた、それは今も昔も変らない、心も軽く身も軽く歩いて、心おきのない、情のあたたかい宿におちついた旅人はほんとうに幸福である。-略-
夜おそくなつて、国政調査員がやつてきて、いろいろ訪ねた、先回の国勢調査は味取でうけた、次回の時には何処で受けるか、或は墓の下か、いや墓なぞは建ててくれる人もあるまいし、建てて貰ひたい望みもないから、野末の土くれとの一片となつてしまつてゐるだだらうか、いやいやまだまだ業が尽きないらしいから、どこかでやつぱり思ひ悩んでゐるだらう。-略-
青島即事と前書して「白浪おしよせてくる虫の声」他5句記している。
林田鉄のひとり語り「うしろすがたの‥山頭火」Scene.2
―表象の森― 「群島−世界論」-18-
こころみに「幸福」という言葉を英訳してみよう。おそらく誰もがごく自然に
詩は大陸から孤絶した島である。わが群島のさまざまな方言-Dialect-は、私にとって彫像の額の上の雨滴のように新鮮に思われる。それは威圧的な大理石の古典的な奮発による汗ではなく、雨と塩という清冽な要素の凝縮そのものである。−D.ウォルコット「The Antilles: Fragments of Epic Memory」
-今福龍太「群島−世界論」/18.ハヌマーンの地図/より