泣事のひそかに出来し浅ぢふに

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―世間虚仮― A Flash of Memory

服飾デザイナー、世界のミヤケこと三宅一生が、ニューヨークタイムズに寄稿した話題の文章、そのタイトルが「A Flash of Memory-閃光の記憶-」だ。

広島で7歳の時に母とともに被爆、3年後その母は原爆症で死亡したという被爆体験、71歳になるこれまで自ら口外することなく内に秘めつづけてきた彼を、いったいなにが衝き動かしたのか。
それは、今年の4月、オバマ大統領が核兵器廃絶への決意を語ったプラハ演説だった。

IN April, President Obama pledged to seek peace and security in a world without nuclear weapons. He called for not simply a reduction, but elimination. His words awakened something buried deeply within me, something about which I have until now been reluctant to discuss.

I realized that I have, perhaps now more than ever, a personal and moral responsibility to speak out as one who survived what Mr. Obama called the “flash of light.”  -以下略-

文の後半では、8月6日の原爆の日に、オバマ大統領招来を切望している運動に触れ、オバマ氏が広島を訪れれば「核の脅威のない世界への、現実的でシンボリックな第一歩になる」と訴えている。

―四方のたより―今日のYou Tube-vol.23-
「NOIR,NOIR,NOIR-黒の詩- Scene.1−連句的宇宙by四方館 Vol.5」

<連句の世界−安東次男「風狂始末−芭蕉連句評釈」より>

空豆の巻」−21

   はつち坊主を上へあがらす  

  泣事のひそかに出来し浅ぢふに  芭蕉

次男曰く、「はつち坊主」が相手なら胸の内を気楽に打明けられる、ということを通いにして愚痴ばなしの内容を立腹から哀傷へ転じたとも、世間をはばかる供養があって鉢坊主を上げたとも読める。いずれにしろ、思いきり泣きたい気分が兆していたところへ、運良く来合せた。門付を表からというわけにはゆかぬから、裏口からこっそり上げる。「ひそかに」とは、その気分的映りの工夫だ。句姿は女に相応しいが男でもよい。

この作りには、6年3月の桃印病死に端を発した「閉関」中の芭蕉の心証も微妙ににじみ出ているだろう。この句と次句「置わすれたるかねを尋ぬる」との付合は、同年春の両吟「梅が香の巻」の名残7.8句目「門しめてだまつてねたる面白さ−芭蕉」「ひらふた金で表がへする−野坡」と見合の趣向のようだ。

句作りは「出来し-ことよ-」、むろん句切れがある。「出来し浅ぢふに」と続けて読めば、「上へあがらす」の補足となり三句は同一人物、転じにならない。一読王朝の情景を容易に誘う句姿だが、先の「源氏」を踏まえた印象的な展開と合せ考えれば、ここは俤など必要とせぬ当世風と読むべきところだ、と。

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