窓をあけたら月がひよつこり

Db07050910127

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、10月8日の稿に
10月8日、晴、后曇、行程3里、榎原、栄屋

どうも気分がすぐれないので滞在しようかと思つたが、思ひ返して1時出立、少し行乞してここまで来た、安宿はないから、此宿に頼んで安く泊めて貰ふ、一室一人が何よりである、家の人々も気易くて深切だ。-略-

日向の自然はすぐれてゐるが、味覚の日向は駄目だ、日向路で食べもの飲みものの印象として残つてゐるのは、焼酎の臭味と豆腐の固さとだけだ、今日もその焼酎を息せずに飲み、その豆腐をやむをえず食べたが。

よく寝た、人生の幸福は何といつたとて、よき睡眠とよき食慾だ、ここの賄はあまりいい方ではないけれど-それでも刺身もあり蒲鉾もあつたが-夜具がよかつた、新モスの新綿でぽかぽかしてゐた、したがつて私の夢もぽかぽかだつた訳だ、私のやうなものには好過ぎて勿躰ないでもなかつた。
※掲げた句のほかに1句
「こんなにうまい水があふれてゐる」を記す

―四方のたより―今日のYou Tube-vol.24-
「NOIR,NOIR,NOIR-黒の詩- Scene.2−連句的宇宙by四方館 Vol.6」

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