故郷の人と話したのも夢か

080209169

―山頭火の一句―昭和5年の行乞記、10月10日の稿に
10月10日、曇、福島町行乞、行程4里、志布志町、鹿児島屋

8時過ぎてから中町行乞2時間、それから今町行乞3時間、もう2時近くなつたので志布志へ急ぐ、3里を2時間あまりで歩いた、それは外でもない、局留の郵便物を受取るためである、友はなつかしい、友のたよりはなつかしい。-略-

安宿の朝はおもしろい、みんなそれぞれめいめいの姿をして出てゆく、保護色といふやうなことを考へざるをえない、片輪は片輪のやうに、狡いものは狡いやうに、そして一は一のやうに! -略-

自動車が走る、箱馬車が通る、私が歩く。
途上、道のりを訊ねたり、此地方の事情を教へてくれた娘さんはいゝ女性だつた。禅宗−しかも曹洞宗−の寺の秘蔵子と知つて、一層うれしかつた、彼女にまことの愛人あれ。-略-
※揚げた句の他に「秋風の石を拾ふ」など20句を記す

―四方のたより― 事件性はある

地下鉄本町-四つ橋線-の駅から近く、中央大通りに面したビルの地下1階に綺羅星-きらら-ホールという空間が登場したのはいつからか、ついぞ知らなかったのだが、25-土-、26-日-の両日、VIA LACTEA DANCE と題したダンス公演が催されていた。VIA LACTEAとは天の河の意味らしい。関西に滞在し活動している外国人Dancerたちが寄った企画だが、これに角正之君が協力して即興performanceを加えた催しである。

前半のA-proは外国人Dancerたちを中心とした振付作品が並び、後半B-proは角正之がCoordinateした即興世界だが、25-土-と26-日-では顔ぶれをがらりと変え、先は男たち中心、後は女たち中心といった趣向。
25-土-の顔ぶれは、レナート.レオン/カミル.ワルフルスキー/フラビオ.アルビス/ピーター.ゴライトリー/中田一史/ザビエル守之助/斉藤誠/角正之に、女性ゲストとして森美香代/ミナル-川西宏子-/Heidi.S.Durningが参加。
26-日-は、小谷ちず子/越久豊子/山田いづみ/三好直美/北垣あや/福原幸/黒田朋子に、加わる男性がレナート.レオン/中田一史/ヤザキタケシ/角正之。

私は先のほうを観、Junkoが後のほうを観た。幼な児が居るため分かれて観ることにしたのだった。
振付作品のA-proはどれも言うべきほどのことはなにもない。ミラノ・スカラ座バレエ学校を首席で卒業し、欧州や南米のバレエ団で活躍して後、’07年帰国したという中田一史の柔軟な身体能力が眼を惹いた程度で、soloにせよDuoにせよ、作品はなべて古臭いセピア色した風景ばかりだ。

だが、B-proの即興は一見の価値はあった。なにしろキャリアも技法も異なる11人のDancerが一堂に会しての競演である、それだけで事件性はある、といえよう。事実、始まってからの10〜15分ばかりは、かなり愉しめるperformanceを供しえたといっていい。これには男性8人に女性3人という配合のバランスも貢献したものと思われる。

女性中心の26-日-のほうを観たJunkoに言わせれば、期待したほどのことはなく、観ること自体かなりきつかったと、報告している。こちらは女性7人に男性4人だ。キャリアも技法も異なるそれぞれのDancerが、その固有な動きを繰り延べたとしても、その差異は男性ほどにはclearなものにはなりにくいという負が、加法・乗法に働かず、減法・除法となって、ただ煩いものに堕してしまいがちになるものだ。

このあたりの事情を、Coordinator角正之はどう推量していたのか。そう容易には成り立たぬ折角の集合の機会が、両夜においてかほどに落差のある結果を呈しては勿体ないというもの、もう少し緻密な計算をしておくべきではなかったか、惜しまれてなるまい。

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