家を持たない秋がふかうなつた

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―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、10月13日の稿に
10月13日、晴、休業、宿は同前-江夏屋-

とても行乞なんか出来さうもないので、寝ころんで読書する、うれしい一日だつた、のんきな一日だつた。
一日の憂は一日にて足れり−キリストの此言葉はありがたい、今日泊まつて食べるだけのゲルトさへあれば-慾には少し飲むだけのゲルトを加へていただいて-、それでよいではないか、それで安んじてゐるやうでなければ行乞流浪の旅がつづけられるものぢやない。-略-

昨日今日すつかり音信の負債を果したので軽い気になつた、ゲルトの負債も返せると大喜びなのだけれど、その方は当分、或は永久に見込みないらしい。
句もなく苦もなかつた、銭もなく慾もなかつた、かういふ一日が時になければやりきれない。
※表題の句は12日付の日記より

―表象の森― 婆々娘々- Po-po Nyangnyang -!

稽古を昨日に振り替えていたので、今日は終日フリー。連合い殿は琵琶のおさらい会があるとて午後から子連れで出かけたから、子どもから解放されて此方もめずらしく単身行動とて、中之島国立国際美術館へと出かけた。

「美の宮殿の子どもたち」と副題された「ルーブル美術館展」がまずまずの人気を呼んでいるようだが、此方のお目当てはそれにあらず、B2で開催中の「やなぎみわ−婆々娘々- Po-po Nyangnyang -!」展。先月めでたく満65歳を迎えた私は、420円也の入場料は障害者らとともに無料、初めて高齢者向け福祉施策の恩恵に与ったという次第。

従来作品の写真展示もずらりと並んで、一応作品の系譜らしきものを追えるようになっているが、なんといっても圧巻は、今年6月7日から開催されているヴェネチアビエンナーレ日本館で紹介されている新作を、そのまま同じ仕様で公開するといった趣向の一室。異形の女五態が4m×3mの巨大ブロマイドよろしく凄まじい迫真力で空間を圧している。

そして小さなテントを模したような小屋では、「The Old Girls”Troupe 2009”」と題されたモノクロの映像作品-10分-が繰り返し映されている。Troupeとは役者や歌手、アクロバットなど巡業の「一座」のことだから、老女たちの一座か、そのperformanceは奇態にはちがいないが、無音で進行しているだけになにやら懐かしいような臭いも発散している。私には嘗て下北半島の恐山に身を置いたときに想い描いた幻視の光景にも似たものに映った。

―四方のたより―今日のYou Tube-vol.28-
「往還記-OHGENKI-?」のFirst stage[http://www.youtube.com/watch?v=y5fIiOF-_f4&feature=channel:title=「WALTZ -輪舞-sculpture.2-WALTZ-輪舞-1」]

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