病んで寝て蠅が一匹きただけ

080209114

―山頭火の一句― 昭和5年の行乞記、10月17日の稿に
10月17日、曇后晴、休養、宿は同前-梅屋-

昨夜は12時がうつても寝つかれなかつた、無理をしたためでもあらう、イモショウチュウのたたりでもあらう、また、風邪気味のせいでもあらう、腰から足に熱があつて、怠くて痛くて苦しかつた。-略-

身心はすぐれないけれど、むりに8時出立する、行乞するつもりだけれど、発熱して悪寒がおこつて、とてもそれどころぢやないので、やうやく路傍に小さい堂宇を見つけて、そこの狭い板敷に寝てゐると、近傍の子供が4.5人やつてきて声をかける、見ると地面に茣蓙を敷いて、それに横たはりなさいといふ、ありがたいことだ、私は熱に燃え悪寒に慄へる身体をその上に横たへた、うつらうつらして夢ともなく現ともなく2時間ばかり寝てゐるうちに、どうやら足元もひよろつかず声も出さうなので、2時間だけ行乞、しかも最後の家で、とても我慢強い老婆にぶつかつて、修証義と、観音経とを読誦したが、読誦してゐるうちに、だんだん身心が快くなつた。-略-

前の宿にひきかへして寝床につく、水を飲んで-ここの水はうまくてよろしい-ゆつくりしてさへをれば、私の健康は回復する、果して夕方には一番風呂にはいるだけの勇気が出て来た。
やつと酒屋で酒を見つけて一杯飲む、おいしかつた、焼酎とはもう絶縁である。
寝てゐると、どこやらで新内を語つている、明烏らしい、あの哀調は病める旅人の愁をそそるに十分だ。
※表題句の外、5句を記す

―世間虚仮― ちょっぴり生意気に‥

3日ぶりに、愛娘どのが元気に帰ってきた。
出発地点だった天王寺駅に、車で出迎えに行ったのだが、着いたときは指定されていた4時30分ジャスト、すでに半数以上の子どもらが迎えの母親らとともに帰ったあとらしく、こちらの顔を見るやちょっぴり泣きべそだったが、それでも結構楽しんできたようで、彼女のいうところによれば、1日目はやや緊張気味に終始したものの、一夜明けるとその環境にもすっかり馴染んだらしく、カリキュラムの一つひとつを、元気よくこなしたようである。同じグループの仲間たちにも打ち解けて、8人ほどの呼び名を順々に挙げていた。
知らない子どもたち、知らない環境に投げ込まれた、初めてづくしの3日間は、半ば緊張しつつも、大いに愉しめたにちがいない、忘れがたい体験ともなろうか。
僅か3日とはいえ、離れて暮した此方には、ちょっぴり生意気になって帰ってきたように映るのものだ。


―四方のたより―
今日のYou Tube-vol.33-
「往還記-OHGENKI-Ⅲ」のSecond stage
「洛中鬼譚−冬月-KANAWA-鉄輪 その壱」

人気ブログランキングへ −読まれたあとは、1click−