明けてくる山の灯の消えてゆく

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−表象の森− 書の近代の可能性・明治前後-1
石川九楊編「書の宇宙-24」より

近代革命の書−西郷隆盛大久保利通副島種臣ら幕末の志士たちは、<唐様>に日本型<墨蹟>の表現を注ぎ込み、太い字画からなるエネルギッシュな一群の特異な書を生んだ。これらの書は唐様+墨蹟という構造を持つことによって、江戸時代の儒者たちの書と同時に禅僧たちの書を乗り超え、相対化する構造を有していた。

山岡鉄舟「粛疎遠岫雲林画」
明治維新期の志士たちの書の中でも禅僧墨蹟的表現性の強い、山岡鉄舟-1836〜88-の書。とりわけ<遠>の後半部、そこから左回転で描き出される<山>部と右回転主体で描き出される<由>部からなる<岫>の、接触感と速度感のめざましい書きぶりは、この書を象徴する。筆圧は強いながらも伸びやかに展開する<粛疎>、擦れながら、やや軽めの筆圧で大回転を見せる<遠岫>、再び墨をつけて<雲林>に展開し、強い筆圧で捩じ込むように回転する<畫>−という具合に、ダイナミックな起承転結を見せる。効果的な筆の荒れを見せる<畫>も含めて見事な書だが、それが定型化した書法に堕しているところが、物足りない。

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/粛疎遠岫雲林畫

高橋泥舟「五言二句」
渋滞・遅滞感を伴った泥舟-1835〜1903-の書。枯れ枝のような筆画からなる痩身の<風>が、この書を象徴する。筆蝕-筆の進み方-が、平面に展開する以上に、槍を突き刺すかのごとく紙-対象-の奥に向かう。そのため<風>の第1画に見られるように、ひとつの字画が点の集合体のような姿で描き出される。しかも、本来は速い速度で書かれるところに生れる連綿草書体を、その遅い筆速で構成するため、筆蝕と速度にずれが生じ、そのずれが不思議な世界を生んでいる。さらに、その筆蝕が<葉>の草書体の第1.2画に見られるように直線的に-紙を離れた筆尖が高く上がらずに-進むため、運筆が抱きこむ平面的・立体的空間の小さな-懐の狭い-構成をもたらし、渋滞・遅滞感を見せている。

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/月明春葉露。雲
/逐度渓風。

 々  「戒語」
先の特異な草書の他に、虞世南の孔子廟堂碑風の、端正で穏やかな楷書も残している。草書と楷書の両者の落差に、一筋縄では捉えられない作者の姿が浮かび上がる。

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蚯蚓内無筋骨之強。外無爪牙之利。
/然下飲黄泉。上墾乾土何。用心一也。
/人能一志事無不成。


―山頭火の一句― 行乞記再び -46-
2月7日、晴、肥ノ岬-脇岬-へ、発動船、徒歩。‥

第26番の札所の観音寺へ拝登、堂塔は悪くないが、情景はよろしくない、自然はうつくしいが人間が醜いのだ、今日の記は別に書く、今日の句としては、−

※表題句の外、3句を記す

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Photo/肥ノ岬-脇岬-風景

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Photo/第26番札所円通山観音寺

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