水鳥の一羽となつて去る

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―世間虚仮―正義の女神

左手に天秤、右手に剣を持ち、目隠しをした正義の女神テミス像は、司法・裁判の公正さを表わす。天秤は正邪を測る正義を、剣は力を象徴し、目隠しは万人に平等の法理念を表わしているというが、被害者家族参加制度に則って、構に満ちた物語をただリピートする場でしかないと断ずるほかない。

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Photo/ルカ・ジョルダーノ-Luca Giordano-の「Justizia-正義の女神-」


―山頭火の一句― 行乞記再び -69-
3月7日、降つたり霽れたり、行程4里、仁井山、麩屋

朝早く出立、歩き出してほつとした、ほんたうにうるさい宿だつた、ゆうゆうと歩く、いいなあ!
今日の行乞相はよかつた、心正しければ相正し、物みな正し。

今日は妙な日だつた、天候も妙だつたが人事も妙だつた、先づ、佐賀を立つて1里ばかり、畔草をしいて一服やつてゐると、刑事らしい背広姿の中年男が自転車から下りて来て、何かと訊ねる、素つ気なく問答してゐたら−振向きもしないで−おとなしくいつてしまつた、それからまた1里、神崎橋を渡つて行乞しはじめたら、前の飲食店から老酔漢が飛びだして、行乞即時停止を命じた、妙な男があるものだわいと感心してゐるうちにドシヤ降りになつた、行乞は否応なしに中止、合羽を着て仁井山観音参拝、晴間々々を2時間ばかり行乞、或る家で、奥様が断つて旦那はお茶をあがれといふ、ずゐぶん妙だ、それからまた歩いていると呼びとめられる、おかみさんが善根宿をあげませうといふ、此場合、頂戴するのがホントウだけれど、ウソをいつて体よく断る。…

久しぶりに山村情調を味はつた、仁井山-第20番札所地蔵院-はよいところ、といふよりも好きなところだった、山が山にすりよつて水がさうさうと流れてくる、山にも水にも何の奇もなくて、しかもひきつけるものがある、かういふところではおちつける、地蔵院の坊主さんがつつましくお茶を呼んで下さつた、しづかでいいところですね、と挨拶したら、しづかすぎまして、と微笑した。-略-

「聖人に夢なし」「聖人には悔がないから」
自分が与へられるに値しないことを自覚することによつて行乞がほんたうになります。
ルンペンのよいところは自由! 主観的にも客観的にも。…
失職コツクと枯草に寝ころんで語つた!

※表題句は3月5日付記載の句、句作なし<仁井山>は<仁比山>の誤記か、第20番札所地蔵院は、現佐賀県神埼市神崎町的の仁比山護国寺地蔵院のこと。

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Photo/第20番札所仁比山護国寺地蔵院

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Photo/その地蔵院と隣り合わせるようにしてある「九年庵」は
幕末蘭方医にて近代医学の祖とされる伊東玄朴の旧宅

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