風の明暗をたどる

Casodecarucomany

―山頭火の一句―

昭和10年師走の6日、
「旅に出た、どこへ、ゆきたい方へ、ゆけるところまで
旅人山頭火、死場所をさがしつつ私は行く! 逃避行の外の何物でもない」
こう日記に書きつけて、彼は其中庵をあとに飄然と旅立った。

遡って、その年の8月に自殺未遂をしている。おそらくカルチモンでだったろう。
その後、小康を得て、「身心脱落」の境などと愉快を装うも、10月になるとまたしても心身不調を歎いている。
「ぼうぼうたり、ばくばくたり」などと書きつけ、暮し向きにも行き詰まったかの言葉を記すばかり。
12月に入ると、その神経は一刻も堪えられぬほどの様相を呈していた。
「死、それとも旅‥‥all or nothing」、
ただこれだけを記した翌る朝、彼は旅立っていった。


―四方のたより― デカルコマニィ的展開なる‥

来週の24日(火)から29日(日)の一週間、デカルコ・マリィの一党が奇想のPerformanceを展開する。
所は、大阪港築港芸術家村計画の赤レンガ倉庫東横のギャラリーCASO。
名づけて、CASOにおける「デカルコマニィ的展開/青空」展、と。

赤レンガ倉庫の芸術家村計画は十年程前から大阪市などがアドバルーンを挙げども、なにせ財政逼迫の折から耐震基準に満たぬ赤レンガ倉庫群の再生は一向具体化の道遠く、横浜のみなとみらい21赤レンガ倉庫群の再開発における国際色豊かな文化発信基地としての成功ぶりとは水を開けられっ放しで、明暗見事な対照をなす。

そんな悲惨な状況下で唯一気を吐いてきたのが、赤レンガ倉庫群の裏に位置する白い建物-旧住友倉庫-に2000(H12))年オープンしたギャラリーCASOである。

Dance BoxやCOCOROOMにわざわざ立ち退いてもらってまでして、二束三文で売却先を求めた新世界のフェスゲ-Festival Gate-さへ、落札先の韓国関連企業とは訴訟沙汰で暗礁に乗り上げたまま、解決の見通しは一向立たない始末で、「新市長よ、なんとかせえ」と思わず野次の一つもかけたくなるほどにお粗末な大阪市である。

現在、反対が都民の過半を占めるというのに、都知事石原慎太郎が音頭をとって東京オリンピックへと誘致に血道をあげているが、その結果がどうあれ此方は知ったことではないが、何年前だったか、そもそも大阪市がオリンピック誘致へなどと名告りを挙げたのは大失態であった。バブル崩壊のさなか、財政はすでに尻に火がついていたというのに、窮余の一策とばかり起死回生を誘致に求めたのだったろうが、世界に向けてとんだ恥を掻き捨てたのが磯村市政だった。

そんなこんなで、大阪市の芸術・文化の振興策やサポート事業は、おしなべて絵に描いた餅となって、ジリ貧の一途を辿っている。

と、泣き言ばかり並べていても致し方ない。さて、その一向進まぬ芸術家村計画にあって孤軍奮闘よろしく美術家たちにスペースを提供してきたCASOでの、どういう風のいたずらか、降って湧いたようなデカルコ・マリィ一党の企画、多数のDancerや役者たちとmusicianらが帯同し、造型、映像、写真と多分野にわたる人々が呉越同舟、各々の日程に合わせて自由参加、ごった煮の祝祭空間だ。

「デカルコマニィ」とはシュルレアリズムのルネ・マグリットの作品題、絵を見れば、ああこれかと誰でも思いあたるほどによく知られた構図だ。
デカルコ・マリィなれば、駄洒落の語呂合せも効いてコピー効果も抜群だが、ご当人はその控え目な気質そのままに素直な物言いで、気宇壮大に風呂敷をひろげているから、その言をそのまま引いて紹介しておこう。


これは「デカルコマニィ→シュルレアリズム→集団創造→風景の捏造」と展開します。
「表現とはイデオロギィ諸形態である!」に起想するのですが、それは押並べてコミュニケーションではないかと考えます。
古人の頃から人間関係が悩事、私と貴方、私達と貴方、私と貴方達、私達と貴方達、私と私達‥がテーマです。
何を根拠に、何(誰)に向けて、何を発するのか?
私は其れを「踊る」行為からアプローチしてみたい。
「踊手/役者」として舞台に立ってきた私の感想です。
演出家/振付家/音楽/衣装/舞台美術/大道具/小道具/宣伝美術/記録/踊手‥等、彼や是やで舞台空間(劇場)が在ります。
自分の行為なのに「私は誰の為に何故に踊っているのか‥?」の想いが浮かんだり沈んだり‥無責任とも思える「客席の拍手」に青褪める。
分野や世界は違え、そんな感覚が今の地球表を覆っているのだと思います。
何処かで釦の掛け違えをしたまま来てしまった‥?
出来るだけ水平(フラット)な関係で其処に居る事をやってみたい!
何かを水平な関係で展示する事から見えて来る世界を見たい!
私は「踊る」を展示します。
音楽、舞踊、写真、絵画、オブジェ、演劇‥等、私の知る人達に声を掛けてパノラマを展開します。


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